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RETHINKING THE SLOT

「14時が空いている」は、何が空いていることなのか

予約表を見て「14時が空いている」と判断するとき、私たちは無意識に何かが空いていることを前提にしています。ではその「何か」とは、いったい何でしょうか。 美容皮膚科の現場でこの問いを詰めていくと、答えは一つではないことがわかります。処置室が空いているのか。使う機器が空いているのか。担当するスタッフの手が空いているのか。——このうちどれか一つでも埋まっていれば、その枠は実際には空いていません

一般的な予約システムの多くは、時間軸を一本だけ持っています。「10時〜10時半は予約済み、10時半〜11時は空き」という単純なモデルです。理美容室のように「1人のスタッフ=1本の時間軸」で近似できる業種なら、これでもおおむね回ります。 ところが美容皮膚科では、施術ごとに使う設備が違い、使う人も違い、しかもそれらの組み合わせが施術メニューごとに変わります。時間軸が一本では、そもそも表現できないのです。

捉え直しのポイント

予約とは「時間を押さえる行為」ではなく「複数のリソースを同時に確保する行為」

この定義に立つと、空き枠の計算式が変わります。空きとは「時間が空いていること」ではなく、その施術が必要とするすべての資源が同時に空いていることです。

重複予約が起きるクリニックの多くは、この定義がどこにも書かれていません。ベテランのスタッフの頭の中には入っているのですが、その知識が予約表という道具の外側にあるため、忙しい日や新人が受付に立つ日に、するりとすり抜けてしまいます。 逆に言えば、頭の中にある組み合わせのルールを外に取り出して定義できれば、重複はかなりの部分を構造で防げるようになります。まずはそこから始めましょう。

DEFINING THE BUNDLE

1施術が食べる資源を、書き出してみる

「この施術には何がいくつ、何分必要か」を明文化することが、自動割り振りの出発点です。

下の表は、施術メニューごとのリソース定義を書き出した一例です。実際の項目名や所要時間はクリニックごとに違って当然ですが、 「部屋」「機器」「人」「前後の時間」という4つの列を持たせておくと、自院の運用を整理しやすくなります。 ここでは特定の製品には触れず、レーザー機器・光治療機器といった一般名詞で整理しています。

施術メニュー(例) 部屋 機器 スタッフ 前後の時間
レーザー系 A(40分)処置室 ×1
(遮光対応の部屋に限る)
レーザー機器 ×1看護師 ×1前 5分 / 後 10分
光治療系 B(30分)処置室 ×1光治療機器 ×1看護師 ×1前 5分 / 後 10分
医師の診察が入る施術(20分+施術)診察室 ×1 → 処置室 ×1施術内容に応じて ×1医師 ×1
+看護師 ×1
部屋の移動 5分
機器を使わない施術 C(60分)処置室 ×1なし担当スタッフ ×1前 5分 / 後 5分
カウンセリングのみ(30分)カウンセリング室 ×1なしカウンセラー ×1後 5分

※ 上表はリソース定義の書き方を示すための例です。実際の所要時間・必要人員・部屋の条件は、院の体制・設備構成・施術内容により異なります。

この表を作ると、いくつかのことが見えてきます。たとえば「部屋は足りているのに機器が足りない」時間帯があること。 あるいは「機器は空いているが、それを扱えるスタッフが別の施術に入っている」時間帯があること。 どこがボトルネックなのかは、定義を書き出して初めて特定できます。感覚で「今日は混んでいる」と言っているうちは、打ち手も感覚的なものになりがちです。

そしてこの定義は、そのまま空き枠計算のルールになります。ある時間に施術Aを入れられるか——その判定は「処置室が1つ以上空いていて、かつレーザー機器が1台以上空いていて、かつ看護師が1名以上空いていて、かつ前後のバッファも他と重なっていないか」という、いくつもの条件の掛け算です。 人間が同時にこれを何十枠ぶんも暗算するのは、もともと無理のある作業なのです。

THE INVISIBLE MINUTES

枠に入っていない「見えない時間」が、遅延を生む

施術時間そのものは、予約表にきちんと書かれています。問題は、その前後にぶら下がっている時間です。 着替えと説明の時間、機器のセッティング、施術後の冷却や整え、次の方を迎えるための清掃と消耗品の補充、機器によっては連続使用のあいだに置く待機時間——。これらは施術ではないので、多くの院で予約枠に含まれていません。

ところが実務では、この見えない時間こそが部屋と機器と人を占有しています。40分の施術に前後15分の実務が付いているなら、そのリソースは実際には55分ふさがっている。 にもかかわらず40分刻みで枠を並べれば、1件ごとに15分ずつ遅れが積み上がり、午後には取り返しがつかなくなります。「予約は埋まっているのに、なぜか毎日押している」という状態の多くは、ここに原因があります。

設計上のコツは、バッファをリソースごとに分けて持つことです。 施術後の清掃は部屋を占有しますが、機器は先に解放できるかもしれません。逆に機器の待機時間中でも、スタッフは別の部屋で次の準備に入れることがあります。 バッファを「施術全体に一律10分」と丸めてしまうと、こうした解放のタイミングの差が消えてしまい、本来は取れるはずの枠まで塞いでしまいます。

細かく見えるかもしれませんが、これは1日あたり数枠ぶんの差になり得ます。稼働に余裕がない院ほど、バッファの持たせ方の精度が効いてくる部分です。 もっとも、詰め込みすぎれば当然、遅延と現場の疲弊を招きます。バッファは「削るための数字」ではなく、現実を正しく写すための数字だと捉えるのが健全です。

SHARED EQUIPMENT

機器は「部屋に固定されていない」という厄介さ

部屋は動きません。スタッフはシフトで動きます。そして機器は、その中間にあります。 据え置きの機器なら特定の部屋に紐づきますが、キャスター付きで部屋をまたいで使う機器や、日によって配置を変える機器があると、「部屋の空き」と「機器の空き」が一致しなくなります

ここで起きがちなのが、部屋ベースで予約を管理していたために、別々の部屋に同じ機器を必要とする予約を同時に入れてしまうケースです。予約表の上では2部屋とも空いているので、何の警告も出ません。当日になって、どちらかをお待たせすることになります。

機器を独立したリソースとして持つ

部屋の付属品としてではなく、機器そのものを1つのリソースとして台数管理します。「レーザー機器 2台」「光治療機器 1台」のように台数で持てば、3件目の予約が同時刻に入ろうとした時点で構造的に弾けます。部屋が空いているかどうかとは、別々に判定されるべき条件です。

部屋と機器の組み合わせ制約を書く

据え置きで動かせない機器や、遮光・給排水・電源容量などの条件で使える部屋が限られる機器があります。「この機器は処置室2と3でのみ使用可」といった制約を定義しておくと、成立しない組み合わせを最初から候補に出さずに済みます。

機器の移動時間を見込む

部屋をまたいで機器を運ぶなら、その運搬と再セッティングの時間ぶん、機器は次の予約に使えません。移動を伴う配置換えが日常的にあるなら、機器側のバッファとして持たせておくのが実務的です。

複数院での共用は「所在」で管理する

分院間で機器を融通している場合、その機器は当日どの院にあるのかが最重要の情報になります。機器に「本日の所在」を持たせ、所在していない院の予約候補からは外す。この一手間がないと、機器が別院にある日に予約を受けてしまう事故が起こります。

移設日そのものをブロックする

分院間で機器を移す日は、往路・復路・設置確認のぶん、どちらの院でもその機器は使えません。移設は「予定」ではなく「その機器の占有」としてカレンダーに置くのが、取りこぼしのない扱い方です。

複数院を運営していると、「A院は機器が余っているのにB院は予約が取れない」という状況が生まれます。これは在庫の偏りと同じ構造の問題です。 機器をリソースとして所在まで含めて管理できていれば、どの院のどの機器が、どの時間帯に遊んでいるのかが見えるようになります。移設や予約誘導を判断する材料になるという意味でも、定義を持つ価値があります。

WHO CAN TAKE IT

同じ施術でも、必要な人数が変わることがある

スタッフというリソースが難しいのは、「1名いればよい」とは限らない点です。同じメニューでも、条件によって必要な人の数も種類も変わります。

ここで有効なのが、スタッフを「個人」と「役割」の二層で持つ考え方です。 予約時点で個人まで確定させるのは、指名がある場合や医師が関わる場合に限り、それ以外は「看護師1名」という役割の枠で押さえておく。誰が担当するかは、当日のシフトと流れの中で確定させる——。 こうすると、早い段階で個人を固定してしまうことによる無駄な枠潰れを避けられます。指名なしの予約に特定の1名を割り当ててしまうと、その人でなければ受けられない予約を、あとから断ることになりかねません。

もう一点。スタッフのシフトが予約の空き枠計算に反映されていないと、「人がいない時間に予約が取れてしまう」という逆向きの事故が起きます。 シフトは予約とは別の表で管理されていることが多く、更新のたびに手で突き合わせるのは現実的ではありません。シフトを予約枠の前提条件として扱えるようにしておくと、この種のずれは減らせます。

WHY MANUAL BREAKS

紙とカレンダーの運用は、なぜ限界を迎えるのか

手動運用が悪いわけではありません。院の規模が小さく、部屋も機器も少ないうちは、ベテランの受付スタッフの判断のほうが、どんなシステムより速く正確です。 問題は、確認すべき条件の数が、規模に対して掛け算で増えていくことにあります。

処置室3室、機器4台、スタッフ6名の院で、1件の予約を受けるたびに確認すべきことを数えてみてください。部屋の空き、機器の空き、機器と部屋の組み合わせ可否、担当できるスタッフの空き、指名の有無、前後のバッファの重なり、当日の機器の所在、シフトと休憩——。 この判定を、電話を受けながら、1日に何十件も、間違えずに行うことが前提の運用は、どこかで必ず綻びます。

手動運用で綻びが出やすい典型的な場面

  • 電話とWeb予約が同時に入り、片方が書き込まれる前にもう片方を確定してしまう
  • 受付が複数人いて、同じカレンダーを見ながら別々の枠を押さえたつもりが、機器で衝突する
  • 変更・キャンセルの反映が遅れ、実際は空いている枠を「埋まっている」と案内してしまう
  • ベテランが不在の日、暗黙のルールを知らないまま枠を取ってしまう
  • 分院間の連絡が口頭で、機器の所在が最新かどうか誰も確信を持てない

共通しているのは、「人が注意深くしていれば防げたはず」の形をとっていることです。だから対策も「気をつける」「ダブルチェックする」になりがちで、忙しい日ほど機能しません。 しかしこれらは注意力の問題ではなく、判定条件が道具の外側にあることの問題です。条件を道具の内側に移せば、そもそも成立しない組み合わせは候補に出てこなくなります。

自動割り振りというと「機械が勝手に決めてしまう」印象を持たれることがありますが、実態は逆です。 やっているのは「院が決めたルールに反する組み合わせを、最初から選べなくする」ことであり、判断の主体はあくまで院側にあります。ルールを書き出す作業そのものが、運用の棚卸しになるという副次的な効果もあります。

PLANNED DOWNTIME

止まる予定を、先にカレンダーへ置いておく

機器には点検や保守の予定があり、部屋には設備工事や大掃除の日があり、スタッフには研修や有給があります。 これらは事前にわかっている「止まる予定」であるにもかかわらず、予約の受付側に反映されないまま当日を迎え、慌てて振り替えの連絡をすることが少なくありません。

ポイントは、ブロックの粒度をリソース単位にすることです。「この日は予約を受けない」と丸ごと閉じてしまうと、その機器を使わない施術まで受けられなくなります。 機器1台だけを止められれば、他の施術は通常どおり受け付けられる。この差は、点検が定期的に発生する院では無視できない大きさになります。

そしてもう一つ大切なのが、不測の停止が起きたときに、影響範囲をすぐ特定できることです。ある機器が使えなくなったとき、今日と明日の予約のうちどれが影響を受けるのか——。 リソース定義があれば、その機器を必要とする予約だけを絞り込めます。定義がなければ、予約表を一件ずつ目で追って施術名から推測するしかありません。緊急時ほど、この差は効いてきます。

なお、こうしたリソース管理の仕組みが扱うのは、あくまで部屋・機器・スタッフ・予約枠といった運営上の情報です。 診療の記録や症状・診断といった医療情報は対象外であり、それらは院が使用する医療情報システム側で管理されるべきものです。予約側は「いつ・どこで・誰が・何を使うか」の割り振りに徹する、という役割分担が明快です。

PUTTING IT TOGETHER

まずは「自院のリソース定義」を書き出すところから

ここまで見てきたとおり、重複予約を防ぐ鍵は高度な自動化ではなく、自院のルールを言葉にすることにあります。 どのメニューが、どの部屋を、どの機器を、どの役割の人を、何分ずつ必要とするのか。この表さえできていれば、あとはそれを予約の判定条件として持てるかどうかの話です。 紙の運用のままでも、定義を明文化するだけで受付の判断はかなり揃います。

そのうえで、Web予約や電話予約が同時に入る規模になってきたら、判定を仕組み側に持たせることを検討する段階です。 条件の掛け算を人が毎回暗算する運用は、どこかで必ず限界を迎えます。仕組みに任せるのは判定だけで、ルールを決めるのは院である——この線引きを持っておくと、導入の議論もぶれません。

株式会社アンカーリンク

この記事を運営する株式会社アンカーリンクが手がける予約・顧客管理システム(リピタス/RepiTas)は、 部屋・機器・スタッフをそれぞれ独立したリソースとして扱い、施術ごとの組み合わせ定義・前後のバッファ・指名の有無・分院での機器共用・メンテナンスのブロックまで、院の運用に合わせて設計できます。 価格は初期費用0円〜/月額11,000円〜。診療記録などの医療情報は保有せず、予約とリソースの割り振りに特化しています。 「うちの構成だとどう定義すればよいか」という整理の段階からご相談いただけます。

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正直な注意点

リソース定義を整えることで、重複予約の発生しやすい構造は減らせますが、当日の急な変更や機器の不具合、施術の延長といった要因まですべてなくせるわけではありません。稼働率や予約件数の変化も、立地・診療体制・需要によって異なり、一律の成果をお約束できるものではありません。 また、本記事は予約運用・リソース割り振りという業務設計の観点をまとめたものであり、施術内容や医療上の判断について述べるものではありません。※実際は院の体制・設備構成により異なります。

FAQ

リソース割り振りと重複予約についてよくある質問

部屋・機器・スタッフを別々に管理すると、設定が複雑になりませんか?
最初にリソース定義を書き出す手間はかかります。ただ、その作業は「どのメニューに何が何分必要か」を整理するだけで、多くの場合は既にベテランスタッフの頭の中にある情報を書き起こす形になります。一度定義してしまえば、日々の予約受付でその条件を人が確認する必要がなくなるため、トータルの負担はむしろ軽くなる例が多くみられます。メニュー数が多い場合は、件数の多いものから段階的に定義していく進め方もあります。
同じ機器を複数の部屋で使い回している場合も対応できますか?
機器を部屋の付属品ではなく独立したリソースとして台数で管理すれば、部屋が空いていても機器が埋まっている時間帯は候補から外せます。据え置きで動かせない機器については「この機器はこの部屋でのみ使用可」といった組み合わせ制約を設定でき、部屋をまたいで運ぶ場合は移動・再設置の時間を機器側のバッファとして見込む設計が可能です。
分院間で機器を共用していますが、どう扱えばよいですか?
機器に「本日どの院にあるか」という所在を持たせ、所在していない院では予約候補に出さない扱いにするのが基本です。移設する日は往路・復路・設置確認のぶん、どちらの院でもその機器が使えないため、移設自体をその機器の占有としてカレンダーに置いておくと取りこぼしを防ぎやすくなります。※実際の運用方法は院の体制・設備構成により異なります。
指名がある場合とない場合で、枠の取り方は変わりますか?
変わります。指名ありの場合は特定の1名が空いている必要があり、指名なしの場合は「その施術を担当できる誰か1名」で成立します。スタッフを「個人」と「役割」の二層で持ち、指名なしの予約は役割の枠で押さえておく設計にすると、早い段階で個人を固定してしまうことによる無駄な枠の潰れを避けやすくなります。
機器の定期点検の日は、予約をすべて止めるしかないのでしょうか?
ブロックの粒度をリソース単位にできれば、その必要はありません。点検対象の機器1台だけをその時間帯に使用不可とすれば、その機器を必要としない施術は通常どおり受け付けられます。急な不具合で機器が止まった場合も、リソース定義があればその機器を必要とする予約だけを絞り込めるため、影響範囲の特定と振り替えの連絡がしやすくなります。
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