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INTRO

シミュレーションゴルフの原価は、家賃と機材と「待機時間」でできている

前の2つは動かせません。3つ目だけが、設計しだいで変わります。

シミュレーションゴルフの店舗は、固定費の構成がかなり特殊です。打席を作るための坪数と機材が最初に大きくのしかかり、そのあとは毎月ほぼ一定の額が出ていきます。売上が増えても原価がほとんど増えないので、損益分岐点を越えたあとの利益率は高い。よく「装置産業に近い」と言われるとおりです。

にもかかわらず、想定より利益が残らない店には、たいてい共通点があります。スタッフが常駐していて、そのスタッフが1日の大半、特に何もしていないという状態です。営業時間が長いほど、この時間は積み上がります。10時から22時まで開けていて、来客が集中するのが平日夜と土日だけなら、平日昼の数時間は「念のため人がいる」ための人件費です。

これは怠慢ではなく、構造の問題です。飛び込みで来るかもしれないお客様に対応するには、誰かがカウンターにいなければならない。鍵を開けるのも、料金を受け取るのも、使い方を説明するのも、人がやる前提で設計されているからです。

この記事では、その受付業務を7つに分解して、どれが仕組みに置き換えられて、どれが人に残るのかを仕分けします。全自動にできますという話ではなく、シフトを何時間削れるのかを現実的に見積もるための整理です。

BREAKDOWN

カウンターで発生している7つの仕事

仕組みに寄せられるか、人に残るかを1つずつ判定します。

受付の仕事 いま起きていること 判定 仕組みに寄せた場合
電話で予約を受ける 打席の空き状況を口頭で確認し、紙かカレンダーに書く。打っている最中に鳴ると手が止まる Webから空き枠を見て自分で押さえてもらう。営業時間外の申込も取りこぼさない
予約の変更・キャンセル 折り返しの電話が発生し、書き直しが起きる。直前キャンセルの穴が埋まらない 本人が画面から変更でき、空いた枠がその場で再販可能になる
当日の受付・打席案内 来店のたびに手を止める。重なると待たせる 予約時に打席が決まっていれば、案内は掲示と通知で足りる
料金の受け取り 現金なら釣り銭とレジ締めが発生。1日の終わりに必ず時間を取られる 事前決済にすれば、当日の金銭のやり取り自体がなくなる
鍵の開け閉め・入退室 スタッフの出退勤時間が、営業時間に完全に縛られる 入退室の管理を仕組みで行えば、無人の時間帯を作れる(設備側の対応は別途必要)
初回の使い方説明 機器の操作、クラブの置き場所、退室のルール。人が説明すると1件10分前後 動画と掲示で大部分は代替できるが、初回だけは人が立ち会う設計が無難
トラブル対応 機器が止まった、球が出ない、次の人と鉢合わせた × 人が必要。ただし常駐ではなく、呼べば来る体制で足りる場合が多い

◎=ほぼ置き換えられる / ○=条件付きで置き換えられる / △=一部のみ / ×=人が必要

EFFECT

削れるのは「作業時間」ではなく「常駐の必要性」

ここを取り違えると、導入しても人件費は下がりません。

予約システムを入れると「電話対応の時間が減る」と言われます。それは事実ですが、1件3分の電話が1日10件減っても30分です。時給に換算すれば数百円で、これだけを狙って導入するなら費用対効果は微妙です。

本当に効くのは、その先です。予約が事前に確定していて、決済も済んでいて、入退室も本人でできるなら、その時間帯に人を置く理由がなくなります。1日3時間ぶんのシフトを外せるかどうか。人件費の話は、分単位の作業削減ではなく、時間帯単位の配置をどう変えられるかで決まります。

だから検討の順序としては、まず「どの時間帯なら人がいなくても成立するか」を先に決めるのが正しい進め方です。平日の10時から15時は予約制の完全無人、夕方以降と土日はスタッフ在席、といった線引きです。そのうえで、無人の時間帯を成立させるために何が足りないかを埋めていきます。

無人にする時間帯を決める

売上の薄い時間帯から。いきなり全時間帯を無人にしようとしない。

その時間帯を予約制にする

飛び込みを受けないと決めることで、待機の必要がなくなる。

足りない設備を足す

入退室・決済・案内表示。人の代わりを1つずつ埋める。

CALC

自店で試算するときの、考え方の手順

金額はお店ごとに違うので、埋める順番だけを示します。

  1. 1

    営業時間のうち、来客が薄い時間帯を書き出す

    曜日別に、1週間ぶん。感覚ではなく、直近1か月の実績で。

  2. 2

    その時間帯の合計シフト時間を数える

    週あたり何時間か。ここが削減の上限になります。

  3. 3

    時給を掛けて、月額の上限を出す

    週◯時間 × 4.3週 × 時給。これが「理論上の削減額」です。

  4. 4

    そこから、残さざるを得ない分を引く

    清掃、備品補充、トラブル時の駆けつけ。ゼロにはなりません。

  5. 5

    仕組み側の月額と、設備の初期費用を並べる

    予約システムの月額、入退室まわりの費用、決済手数料。

  6. 6

    何か月で回収できるかを見る

    12か月以内なら十分検討に値します。24か月を超えるなら、無人化の範囲を広げるか、見送るかの判断です。

注意したいのは、4番を飛ばして試算しないことです。無人時間帯でも、閉店後の清掃や、翌日の準備、機器の再起動といった作業は残ります。ここを引かずに計算すると、実際より2〜3割は良い数字が出てしまい、導入後に「思ったより下がらない」ことになります。

TRADE-OFF

人を減らすと、代わりに増える仕事があります

これを見込んでおかないと、削ったつもりで別の負担が生まれます。

🧹

清掃と原状回復の頻度が上がる

人の目がない時間帯は、どうしても使い方が雑になります。次のお客様が気持ちよく使えるよう、清掃の回数と担当を決め直す必要があります。

📞

電話ではない問い合わせが増える

「入れません」「機械が止まりました」という連絡が、営業時間外にも届きます。誰がどこまで対応するかの当番を決めておかないと、オーナーの携帯が鳴り続けます。

📋

ルールを文章にする手間

人が説明していた内容を、掲示・動画・案内文に落とす作業が発生します。一度作れば済みますが、最初の負荷はそれなりです。

🔍

トラブルの原因が見えにくくなる

誰が使ったあとに壊れたのか、現場を見ていないと分かりません。予約記録と入退室の記録が結び付いていることが、あとから効いてきます。

無人運営の設計そのものについては、24時間営業と無人予約の設計完全無人化に耐える予約管理で、より踏み込んで扱っています。

FAQ

よくあるご質問

Q. 予約システムを入れれば、すぐに人件費は下がりますか?
すぐには下がりません。シフトを実際に削って初めて金額が動きます。予約が自動で入るようになっても、これまでどおりの時間帯にスタッフを置いていれば、人件費は1円も変わりません。導入と同時に、配置をどう変えるかを決めておくことが必要です。
Q. 完全無人にすると、客層が悪くなりませんか?
この懸念はよく聞きます。実際、無人時間帯のほうが備品の扱いが雑になる傾向はあります。会員制にする、初回だけは有人時間帯に来てもらう、といった条件を付けている店が多いのはそのためです。無人化と会員管理はセットで考えるのが現実的です。
Q. レッスンも並行してやっている場合はどうなりますか?
打席の予約とレッスンの予約を、同じ枠として管理できるかがポイントです。コーチが入る枠は打席が1つ埋まるので、別々の台帳で管理すると必ず重複します。片方だけ自動化して、もう片方を手作業で残すと、かえって事故が増えます。
Q. 既存の店舗でも、あとから無人時間帯を作れますか?
作れます。ただし入退室まわりの設備は、あとから足すほうが割高になりやすい部分です。まず予約と決済を先に整えて、無人にする時間帯を予約制で運用してみる。そこで問題がなさそうなら設備投資に進む、という順番が安全です。
Q. スタッフを減らすと、常連客が離れませんか?
来店の目的によります。打ちたいだけの方は無人でも困りませんが、コーチや店長と話すことを楽しみに来ている方には影響があります。だからこそ、時間帯で分ける発想が有効です。人がいる時間といない時間の両方を作れば、どちらのお客様も残せます。
Q. 小規模な2打席の店でも意味はありますか?
あります。打席数が少ない店ほど、1人のスタッフが占める人件費の比率が高いためです。むしろ大型店より効果が出やすい場面もあります。ただし売上規模も小さいので、設備投資の回収期間は必ず先に計算してください。

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